
失業保険を給付するときに受けられる、公共職業訓練ってご存知ですか?
仕事に役立つ訓練が無料で受けられる上に、失業手当が早く受けられたり、支給期間を延長できる可能性もある、お得な制度なんです。
でも、ハローワークですすめられたりするわけでもなく、詳しい情報が載った本やパンフレットがあるわけでもないので、スケジュール感やコースの内容、手続き方法がわかりづらい。
そこで今回は、実際に公共職業訓練を受けた人に、申し込みのポイントや、具体的な手順を詳しく聞いてみました!
目次
1. 教えて!総務の山口さん
山口さん:筋金入りのプロの事務職。
労務、税金、経理なんでもお任せ。

山口さん、公共職業訓練受けたことがあるそうですね。何の勉強をしたんですか?

事務職としてスキルアップするために、簿記や税務処理についてのコースを受けました。
ここで基礎を固められたので、突然のトラブルや新しいことにも対応できる力がつきましたよ。

公共職業訓練について調べても、あんまり詳しい情報が載ってないんです。どうやって受講したらいいか教えてください。

私は総務なのでこれは専門分野!
それに、ひととおり経験したのでお答えできますよ。
特にポイントになるのは、離職のタイミング設定とコースの選び方です。
2. 節約しながらスキルも仕事もゲット!公共職業訓練のメリット
・基本的に受講料無料
・専門的な授業が受けられる
・受講手当、遠方から通う場合は交通費が支給される
・受講タイミングによっては失業保険の給付制限が短縮できる
・受講タイミングによっては失業保険の受給期間が延長されることも
・学校経由で希望にマッチした求人に出会える
・業界にあわせた就職指導を受けられる
・同じ目標をもつクラスメイトがいるからモチベーションアップ

メリット多すぎる!!

公共職業訓練には、経済的にも心理的にも支えてもらえて、本当にありがたかったですね。
仕事を離れていたからこそ勉強に集中できて、しっかり身につきました。
3. そもそも公共職業訓練ってどんな制度?
公共職業訓練とは、国や地方公共団体が、主に雇用保険を受給している求職者を対象に就職支援のために実施している訓練です。
専門の訓練施設や、委託された民間の専門学校で開催されます。
⇒ 雇用保険の受給について詳しくはこちら
※ここでは触れませんが、雇用保険の給付を受けていない人にもコースが用意されています。在職中でも受けられる在職者訓練、高等学校卒業者を対象にした学卒者訓練、雇用保険の給付外の方向けの求職者支援訓練など。
だれでも公共職業訓練を受けられる?
原則として、雇用保険を受給していれば、だれでも申し込むことができます。
ただし、例外もあります。
・職業訓練を受けたことがある場合は、受講修了してから1年未満の人
・過去1年以内に退校処分を受けたことがある人
・年齢制限や申し込み資格などが設定されているコース
そして、申し込みは確かにだれでもできますが、希望すれば必ず受けられるというわけではありません。
選考を通過して、ハローワークから就職支援として受講が必要だ、という印である受講指示をもらう必要があります。

事務職を希望する人は多いので、私の受けたコースは当時倍率が1.3倍。ときには2倍超になることもあります。
公共職業訓練にはどんなコースがあるの?
介護、工作、医療事務、総務・労務、金融、美容、ペットなど幅広い分野のコースがあります。
ITひとつとっても、基本的なビジネスパソコン講座から、より専門的なプログラミングやweb製作まで、レベルや専門性もさまざま。
コース内容は時期や都道府県によって違うので、厚生労働省のサイトで確認してみてください。
参考:公共職業訓練コースの検索について|厚生労働省
ハローワークにもパンフレットが置かれていますが、掲載されていない追加コースも存在します。
上記サイトやパンフレットである程度方向性が決まったら、担当ハローワークの窓口で相談するのがベストです。

サイトやパンフレットでは、そのコースの具体的な内容やレベル感が全くわかりません。
ハローワークの窓口で詳しく聞いて、本当に受けるべきか認識合わせが必要です。
こちらの希望に合わせて、コースの提案もしてくれましたよ。

せっかく受かったのに、フタを開けたら全然ついていけなかった、思っていた内容じゃなかった、ということになるとツラすぎますもんね。
4. 失業中でも安心!経済面から支えてくれる制度も
公共職業訓練開始にあわせて給付制限が短縮

自己都合退職の場合、失業保険(雇用保険の基本手当)が支給されるまでに、本来は3ヶ月の制限期間があります。
しかし、公共職業訓練を受講することになり、制限期間があける前に訓練が始まる場合は、制限期間が短縮されます。
※訓練開始までに、すでに3ヶ月の給付制限を終えて給付が始まっている方には、影響はありません。

私は自己都合退職だったので3ヶ月の給付制限があるはずでしたが、離職後約1ヶ月で訓練開始になったので、あわせて給付制限も短縮されました。
また、長期のコースを受講することになった場合など、本来の失業保険の受給期間を超えて公共職業訓練が続く際には、修了まで(最長2年)失業保険の給付が延長されます。

じゃあ、失業保険をほとんどもらいきってから訓練に申し込んだ方が、延長のメリットを受けられてお得ってことですか?

いいえ。そうした延長目的の訓練受講を防ぐため、この延長措置を受けるには、訓練開始までに給付日数の3分の2以上の給付額が支給されずに残っていることが条件になっています。

希望した訓練に必ず受かるわけではないですし、狙ってやるのは難しいです。あくまでサポート制度の一部として知っておいてください。
失業保険にプラス!受講手当と交通費
通常なら基本手当だけのところ、公共職業訓練を受けると受講手当、通所手当が一緒に支給されます
公共職業訓練を受講している間は、失業保険に加えて日額500円の受講手当をもらうことができます。
また、自宅から一定の距離があって、受講する施設へ通うために交通機関、自動車などを利用する場合は、通所手当という交通費が月額最高42,500円まで支給されます。

テキスト代は自己負担でしたが、授業料が無料な上に、他の部分でも経済的な補助があり、安心して勉強に取り組めました。
5. 公共職業訓練をフル活用するために注意したい3つのポイントとは?

公共職業訓練、ぜひ利用してみたいです!でも最初に言っていた離職のタイミング設定とコースの選び方がポイントになるってどういうことなんですか?

先ほど説明しましたが、公共職業訓練は自分の受けたいコースが常に用意されていて、希望すれば必ず受けられる、というほど都合のいいものではありません。

そこで、希望にできるだけ近づけて受講できる確率を高めるために、ポイントをおさえて行動することが大切になるんです!
ポイント1:このコースが再就職に必要な客観的な理由を固めておく
コースによりますが、選考のために志望理由を問う作文や面接があります。
公共職業訓練の目的は就職支援なので、訓練受講がどう就職につながるかが重視されます。
職業訓練における受講者の選考については、現在有する技能、知識、適性等の状況から判断して、職業訓練を受講することが再就職のために必要な能力を有することなどを総合的に判断して行っています。
参考:よくあるご質問について|厚生労働省
なんとなく役立ちそうだから、人気の職種だから、などの根拠に乏しい理由では、受からない可能性が高いです。
次はどんな職場でどんな風に働きたいのかまで固めて、コースを選んだほうがいいですよ。

私は前職も事務職でしたが、OJTと独学ばかりで基礎が身についていなかったのがずっと気がかりでした。
そこで、次の仕事でも同じフィールドを選んでステップアップしていきたい、そのためにこのコースで基礎を体系的に学びたい、という風にアピールしました。
ポイント2:離職と訓練開始のタイミングを調整

公共職業訓練はいつでも用意されているわけではなく、コースごとに訓練開始時期が決まっています。
(1月、4月、7月、10月スタートのコースが多いようです)
それにあわせて、募集期間が設定されています。
訓練開始の2ヶ月前に募集を開始して、1ヶ月前には締め切り→選考にはいるパターンが多いです。
そのため、離職後にコースを探しても、募集期間がすでに終わっていたり、次回の募集が遠すぎる、ということが起こりえます。
運任せにせず、希望のコースをタイミングよく受けるには、離職日の調整が欠かせません。

会社都合で急に解雇されてしまった、という場合は難しいですが、離職までに猶予がある人は、離職前から動くとより希望が叶いやすくなります。
できれば、離職予定の1~2ヶ月前からコース選びをはじめて、離職日も訓練開始日から逆算して調整したいですね。
給付日数残が多い人ほど有利になる
失業保険給付時の公共職業訓練の選定基準の一つに、受講の開始日までに給付日数がどれくらい残っているかがあります。
雇用保険を受けている方に対する公共職業訓練の受講指示については、早期再就職の促進のため、原則として雇用保険の所定給付日数の2/3に相当する日数分 (ただし、所定給付日数が90日の場合は90日分、120日又は150日の場合は120日分、240日以上の場合は150日分まで)の基本手当の支給を受け終わる日以前に、受講が開始される職 業訓練を対象としてハローワークで受講の必要性を判断させていただいております。
参考:よくあるご質問について|厚生労働省
そのため、コース選びに時間がかかったり希望のコースの開始時期が遅かったりすると、その間に受給日数を消化してしまい、合格する確率が下がってしまいます。
これも、離職前に動きはじめていただきたい理由です。
ポイント3:自分のレベルと目的に合ったコースを見極める
お得だし、なんでもいいから受けてみよう、という感覚で公共職業訓練の申し込みをするのは、自滅につながります。
再就職までの道筋もよく考えた上で、自分のレベルと目的に合ったコースを見極めましょう。
平日9時~17時の受講は結構ハード
当時のノートには、ビッシリ書き込みが
公共職業訓練は、基本的に月曜日〜金曜日の9時〜17時までみっちり訓練があります。
コースによっては宿題が出る場合も。
並行して求職活動するのもなかなか大変です。
安易な気持ちで受けると、かえって辛いことになるかもしれません。
まじめに訓練を受けることが前提!欠席・遅刻で不支給、退校も
公共職業訓練の手厚いサポートは、訓練を受講することで支給の対象になります。
そのため、「病気や負傷」、「やむを得ない理由」以外で欠席すると、支給の対象外になります。
・病気、怪我
・親族の看護、介護
・親族が危篤状態
・親族の忌引き
・配偶者と3親等以内の血族・姻族の命日の法事
・本人、親族の結婚式、新婚旅行
・子供の入学式、卒業式
・就職に関係する各種国家試験、検定などの資格受験
・災害で交通が途絶えて通えない
・交通機関の事故

ただし、やむを得ない理由でも規則で決まっている証明書がないと認められません。

例えば、病気だったら、医師の診断書又は証明書が必要です。
私は親族の忌引きで欠席した事がありますが、その際には、お葬式の案内状の写しを提出しました。
病気や怪我で休んだときに提出する傷病証明書

かなり厳しい・・・。なんとなく調子が悪い、なんて理由ではダメなんですね。
理由を偽って申告すると、不正受給として扱われてしまいます。
また、頻繁に遅刻、早退、欠席をして、総訓練時間の8割以上の出席ができなくなった時点で退校になります。
やむを得ない理由であっても、欠席が訓練時間全体の2割を超えると退校になりますので、本当に受講したいのかよく検討してください。
6. サクッとわかる!申し込みから受講までの流れと手順

1. 受講したいコースを探す
パンフレットやwebサイトでどんなコースがあるか調べたり、自分の希望をハローワークの窓口で伝えて、最適なコースを提案してもらいます。
⇒ 詳しくは「どんなコースがあるの?」の章を参照
2. ハローワーク窓口でコースの内容を相談する
コースのレベル感や、どんなことが学べるかは資料ではわからないので、窓口で直接聞いてみましょう。
倍率など難易度も相談できます。
訓練開始の日程も考慮に入れて、応募するコースを絞り込んでいきます。
この相談は、制度の説明や、希望とコースのすり合わせのために1回で終わらない場合があるので、できるだけ早めに行っておきましょう。
特に希望コースが募集終了間近の場合は気をつけてください。
3.ハローワーク窓口を通して申し込み
受講するコースが決まったら、窓口で受講申し込み書などの書類一式が渡されるので記入して、本人確認書類などの必要書類とあわせて提出します。
離職前に応募する場合はここで求職の申し込みも済ませる
離職の予定日を伝えれば、公共職業訓練には離職前に応募することができます。
求職申込書をハローワークに提出して、ハローワークカードを発行してもらいます。
参考:記入例:求職申込書|ハローワーク

申し込みは離職前にできますが、訓練開始前には離職して、雇用保険の受給者資格を取得しておく必要があります。
そのため、訓練開始日の2週間前には余裕をもって離職できるよう、離職日の調整しましょう。
4. 選考を受ける
志望理由を書いた書類を提出するだけのところから、筆記試験や面接があるところまで、選考の内容はコースによって異なります。

私が受けた簿記・経理のコースは筆記試験も面接もありました。

筆記試験って難しかったですか?

就活でよくあるSPIテストを簡単にしたような内容で、高校レベルでした。
むしろ、面接の方が重要だった印象です。

面接では、志望理由や、事務を目指す理由、何を学びたいかなど、就職との関係性や意欲を問われました。

面接の服装はやっぱりスーツですか?

面接は私服でもよかったのですが、やはり就職への意欲を見せるためにスーツで来る人がほとんどでしたね。
5. 合格したらハローワークで受講指示をもらう
合格すると、訓練を受ける学校から合格通知が届きます。
ハローワークへ行って手続きを受け、受講指示をもらいます。
訓練がはじまったら:月に1回みんなで一斉に認定手続き
公共職業訓練を受けている人がハローワークへ提出する受講証明書
公共職業訓練を受ける人は、通常の給付金受給と手続きの流れが変わるので、訓練開始日にハローワークへ入校証明書などの書類を持って行き、切替手続きをします。
失業保険では各個人ごとに決められていた認定日が、公共職業訓練の受講者は、学校ごとの月末の認定日に統一され、学校が一括で手続きをします。
後日、訓練受講状況が記載された公共職業訓練等受講証明書を持ってハローワークに各人が手続きに向かいます。(その日は午後から休講)
7. 訓練のココがよかった!受講して感じたメリット
当時のテキストの一部

私が受けた総務・経理事務科コースはこんな内容でした。
・パソコン会計
・税務会計
・パソコン基礎
・社会保険、給与計算
・就職支援

簿記3級を全員受験するんですね。

一人ではなかなか難しい資格の勉強が、授業として受けられるのはいいですよね。
希望者は簿記2級も受けることができました。

授業内容の充実度は希望どおりでしたか?

想像以上に専門的でみっちり本格的でした。

私が受けた社会保険・給与計算の授業の講師は、社労士として会社の顧問をされている方でした。
年間を通じてのスケジュールや実体験を交えての解説であったり、初心者や未経験者が間違いやすいところを丁寧に教えていただけたのが良かったです。

他の受講者の方ってどんな人がいたんですか?

経歴や年齢はバラバラでしたね。事務職の経験者もいれば、接客や営業職をしていた未経験者もいたし・・・。
私はもともと事務職で働いていたので問題なかったのですが、やはり未経験の方はついていくのが大変そうでした。
同じ目標をもつクラスメイトがいるからモチベーションアップ
一人だと、ついだらけてしまったり、不安で辛くなってしまいがちな求職活動。
一緒に頑張る仲間ができるのも、公共職業訓練の隠れたメリットです。

職業訓練では、事務職での就職という共通の目標を持つクラスメイトに囲まれていました。
みんなと応募の状況や、受けた面接の情報共有をすることで、求職活動へのモチベーションが保てました。
職種に合わせた就職支援が素晴らしかった!
就活支援のテキストと資料

授業内容も充実していましたが、就職支援もよかったです。
面接指導は、希望職種にあわせて細かいアドバイスをもらえました。
たとえば、同じ事務でも、「経理事務志望だったら・・・」「総務職だったら・・・」と具体的でした。

面接を受けてきた様子を報告したり、提出した履歴書を見せると、アドバイスをもらえたりもしました。
心強かったです。
学校に来る求人に応募できる
通常のハローワークの求職は、ハローワークに寄せられた雑多な求人から自分にあったものを探さなくてはいけませんが、公共職業訓練を実施している学校にくる求人は、受けているコースに関連する求人が充実しています。
そのため効率よく、希望に近い求人を探せます。

ハローワークの求人検索は、絞り込み機能が弱くてなかなか希望の条件の求人に出会えないんですよね・・・。

学校にくる求人は、特定ジャンルの訓練を受けて知識が身についていることが前提なので、職種が絞り込まれているし、条件や職務内容も詳しくて、判断がしやすかったです。
8. まとめ:希望の公共職業訓練を受けるための3つのポイント
訓練修了後、求職に取り組んで、希望の総務職に就くことができました!
2. 計画的に受講申し込みを進める
3. ハローワークに相談して内容とレベル感を自分に合わせる

受けないと損だから、っていう考えで公共職業訓練に応募しても、なかなか合格は難しそう。それに、受かってもあとが辛そうですね。

目的意識がないまま受講すると、拘束時間が長いし、勉強も大変なので、結果損するかもしれませんね。

私もそうでしたが、公共職業訓練を受けていたことが、求職活動でそのまま評価されることはほとんどないと思います。
勉強したことをどう仕事に活かしていけるかを語れるかどうかが大切なので、コース選びから計画的にしっかり考えて進めていただきたいです。
失業は大変なことですが、公共職業訓練を受けてスキルアップのチャンスにすることもできます。
あなたの求職活動がうまくいきますように!











