こんにちは、京都のフリーペーパーのお店・只本屋(ただほんや)の岩城です!
皆さんはフリーペーパーって読みますか?
実は最近のフリーペーパーって普通の雑誌よりも内容がとっても専門的だったり、
つくった人自身の気持ちがたっぷり詰まった密度の高いものもいっぱいあってめちゃくちゃ面白いんです。
そんな、無料で読めるのに面白いフリーペーパーたちの中から、今回ご紹介するのは…
「フリースタイルな僧侶たち」!!
実はこれ、企画、写真、テキスト、イラスト、デザインまで、全てお坊さんが中心となって作っているフリーペーパーなんです!!
特集名だけを見ても………………
「お坊さんの恋愛事情」「拝観料のゆくえ」「進化系お守り」などなど…
気になるワードのオンパレード〜〜〜〜〜〜!
なんと中の漫画コーナーまで僧侶が描いているんです。その名も「お坊さん日和。」!
左に見えるコーナーも…
「仏教的視点で映画を見てみる。」(!!!???)
「出家者・ダース・ベイダー」(!?)
「しりとり法話バトル」(!?)
すでにフリースタイルさが突出しています!!!
僧侶って、一体どこまでフリースタイルでもいいの!?
これは直接聞くしかないということで、
「フリースタイルな僧侶たち」の編集長に直撃してきましたっ!
いざ「フリースタイルな僧侶たち」編集部へ!
カフェの入っている、この可愛らしいビルがフリースタイルな僧侶たちの編集部だそう。
編集部、お寺じゃないんだ…!?
こちらが編集長の若林唯人(わかばやし・ただと)さん。
めっちゃ普通〜!
髪の毛生えてる〜!
服がカジュアル〜!
と、3拍子揃ってすでにフリースタイルな香りがします。
私の思ってた僧侶ってもっと…
うん、こんなイメージ!思ってたんと全然ちゃう〜〜〜!
すでにイメージとかけ離れているフリースタイルな僧侶・若林さんから、たくさんのおはなしを伺いました!
全員僧侶の編集部って本当なの?
どこまで僧侶が作ってるの?

本日はよろしくお願いしますー!
まずはフリーペーパー「フリースタイルな僧侶たち」について教えてください!

仏教の未来に挑戦するフリーマガジン「フリースタイルな僧侶たち」は、偶数月の1日付で発行しているフリーペーパーです。
新しい視点で仏教を見て、興味を持ってほしい。そんな想いで制作しています。

日々フリーペーパーをたくさんみる機会がある自分からしても、「フリースタイルな僧侶たち」はめちゃくちゃ素晴らしいです!
内容も毎回面白くて、表紙もキャッチー。デザインも素敵で…この完成度をプロではなく、僧侶が作っているっていうことが信じられない!!

ありがとうございます。作っているのはみんな素人のお坊さんなんですけどね…日々勉強です。
また、編集スタッフの中には一般の女性もいてくれてるんですよ。
お坊さんだけで文章を作ると、どうしても読者の人にとっては意味の分からない仏教用語を説明不足のまま使ったりしてしまう。
そういうところを指摘してくれはる、大切な存在です。
デザインは、梅本龍青さんという日蓮宗のお坊さんにしてもらっていて、全幅の信頼を置いてるんです。

デザインも僧侶が!?

私は二代目編集長なんですが、一代目編集長のお坊さんがすごい方で文章もDTP(レイアウト)も、ほとんど一人で作られるところからスタートしたんですよね。
そしたら「私デザインしたいです」という人とか、徐々にいろんなお坊さんが関わってきて、今ではデザイン、テキスト、写真、イラストも基本的に僧侶が作ってますね。
編集長のお仕事は?

こんなにも毎回内容が濃いフリーペーパーを作るのって大変ですよね、若林さんは編集長として、どんなお仕事があるんでしょうか。

巻頭の特集記事が、一番の仕事ですね。企画はスタッフで意見を出し合いながら考えることが多いかな。
4,000字ほどの文章だけど、初めて仏教に触れた方でも読みやすく分かりやすく、かつ深く伝えられるように、毎号2ヶ月間つきっきりです。

写真も毎回綺麗なんですが、こちらも僧侶が撮ってるんですか?

いいこと言いますね。これは僕が撮りました(照)

「vol.41 お坊さんの恋愛事情」の表紙写真はこの事務所で撮ったんです。そこの壁にピンクの布を貼って。

写真まで…!
編集長といえどフリースタイルになんでもしてしまうんですね!!
本当になにからなにまで僧侶が作っているだなんて…!
フリースタイルな活動をしているんだなあ!!!
バラエティあふれる僧侶たち

若林さんもめっちゃフリースタイルだと思うんですがそれ以上に、フリースタイルな僧侶たちで取り上げてる僧侶のバラエティさがすごいですよね。
若林さん一押しのフリースタイルな僧侶を紹介してください!

まずは、尼僧アイドル中村祐華さん


この方、めっちゃかわいい!と思ってwebで見てみたらすごく派手な衣装で、どっきりしちゃいました!
この表紙はかなりマイルドですよね?

彼女は愛$菩薩(あいどるぼさつ)という名前でアイドル活動をしている本物の尼僧さんで、菩薩姿で歌う姿はインパクトがすごいです。
やばくない!?とも思ったんですが、若い人の反応はいい意味で全然違ってて、「おもしろいやん!」っていう声もあって…

それに実際にお会いして話してみると、むっちゃ真面目で。
仏教に対する想いも人一倍強くて…インパクトももちろんあったんですけど(笑)そんなところもぜひ取り上げたいと思って企画しました。

あと、プロジェクトとしてフリースタイルなのはOMAMOですね


進化系お守りOMAMOですよね。これ、めちゃくちゃ可愛くて欲しいなって思ってました。
お守りがweb買えちゃうって…新しい!

ポップでファッションぽく思われそうだけど、OMAMOはとっても厳しい荒行をされてるお坊さんが監修してはる、完全オーダーメイドのお守りなんですよ。
日蓮宗では荒行を終えたお坊さんだけが御祈祷を許されているんです。

荒行とは…どんなものなんですか?

皆さんが想像するような、本当に厳しい修行ですよ。水をかぶったり、ご飯もおかゆのみやったり…それも真冬に。

し、信じられない…!でもそれこそ僧侶ってかんじがする!

普通のお守りって、「商売繁盛」とか「交通安全」とか願い事ごとにまとめてご祈祷をしているんです。そこから自分の悩みに合いそうなものを選ぶ。
でもOMAMOは全く逆のプロセスで、まず申し込まれる方がwebの記入欄に「願い事」や「悩み」を書くんですよね。
それをお坊さんたちが読んで、内容に合うデザイン(縁起柄の組み合わせ)を選ぶ。
それから、その方のお名前を読み上げてご祈祷をして作られる、オーダーメイドのお守りなんですよ。

思ってたよりずっとすごい!ますます欲しくなってしまった…!

あと僕が一番惚れたというか、この人に出会えて本当によかった、という方が「vol.40 魚を売るのも僧侶の仕事」で取り上げたこの人!


日蓮宗の佐々木教道(ささき・きょうどう)さん。
魚を売る、と言っても実際に魚を売って生計を立てているわけではなく、都市部とは離れた港町の住職として自分のことよりもまず町の人たちのために、お寺のことよりも先に地域のために、それこそフリースタイルに、様々に行動されている方なんです。
例えば、漁師さんたちの収入源の一助となればという思いから、つながりのある都会のお寺での「寺市」とつないだりして、魚を売るお手伝いをしたり、シンガーソングライター住職としても活躍している。自分の地域のB級グルメを発信するために「勝浦タンタンメン音頭」を作曲したり。

ほんとここでは書ききれないくらい素晴らしい方なので、詳しくはこの号を読んでください。(笑)
一番フリースタイルな僧侶は法然聖人

じゃあ佐々木さんが一番フリースタイルなんですかね?

いや!やっぱり、一番フリースタイルだと思うのは歴史上の人物ですが、法然聖人ですね

それまで仏教は、厳しい修行をすることができる、限られた人たちのものだったんです。
でも法然聖人は、誰でも「南無阿弥陀仏」とお念仏を唱えれば救われるという教えを、きちんと経典に基づいて、新しく説かれたんですよ。それで、仏教がすべての人に開かれた、というか。
「結婚した方が念仏しやすいなら、結婚すればよい」とも言われて。それまで僧侶の結婚も許されてなかったんですがその言葉を聞いて、結婚した方もいるんですよね。

結婚まで!?
それまであかんかったのに!?

そうです。フリースタイルすぎるでしょ。(笑)
他宗派からの反響は?

変なことばっかり取り上げてますが、若林さんって浄土真宗ですよね。
他の宗派とかから文句を言われたことはないんですか?

色んな宗派の方とお話ししてきましたが、違うところがあるとはいえ、同じ仏教だし、やっぱり通ずるところはあって。全然ぶつかることはなかったですね。
創刊当初は物議を醸したみたいですが、むしろ最近は「取り上げてほしい」という声をいただくこともあって。

そうなんだ、意外と協力的なんですねえ。
こんなにフリースタイルなのに…

協力いただけるのも、フリースタイルな僧侶が増えてきているのも、実は若者の仏教離れが原因なんです。
若者の仏教離れを食い止めたい「フリースタイルな僧侶たち」
仏教が身近になる『きっかけ』の一つになりたい
若者の仏教離れから、仏教を次の世代にいかにして伝えていくかが、宗派に関係なく現代のお坊さんたちの課題だそう。
なんと今でも、僧侶のお仕事だけでは食べていけない方も実は多いんだとか。
昼間は檀家参りをしたり…など僧侶のお仕事をしながらも、幼稚園を経営したり、小学校の教師やバーテンダーなど、様々な副業をしている僧侶もおられるそうで…

若者の仏教離れ、たしかに私も、仏教のことは全然知らなくて遠い存在です。

昔はお仏壇に手を合わせるおじいちゃん・おばあちゃんの後ろ姿から、仏教が伝わってたと思うんですよ。
でも、家族のあり方が変わって、核家族も減って、最近は個々で生活をするようになってる。
実家にはお仏壇があるけど、今住んでる家にはない、という人がほとんどですよね。
ちなみに岩城さんの今のおうちにお仏壇って…?

もちろん、ないです(笑)

ですよね(笑)
だから、今までと同じことをしていたら仏教が受け継がれない、という危機感が若い世代のお坊さんは強くて。
「僧侶の仕事は、これ」みたいな固定観念から自由にならないと、それこそフリースタイルにならないと、という思いがあるんですよ。
僕たちも、仏教が身近なものとなる「きっかけ」の一つになれたら、という思いで活動しています。

なるほどー。じゃあこれからどんどん、私たちのイメージにはないフリースタイルな僧侶が現れてきそうですね。
ちなみに、若林さんも副業をされてるんですか?

僕はしてないんです。
檀家さんのおうちでお経をあげたり、お寺で法話をしたり、本山の本願寺で職務をしたりです。
でも「フリースタイルな僧侶たち」が副業かな。ボランティアなので課外活動に近いですが(笑)
結局、僧侶ってどこまでフリースタイルでいいの?

最後に、僧侶ってどこまでフリースタイルでいいんですかね?
まず、虫を殺してもいいんですか?

虫は…お寺は隙間がいっぱいあるので頑張って逃がすようにしてますけど…ワンルームマンションとか絶対また遭遇しちゃいますよね?………自信がありません(笑)

じゃあ、恋愛はしていいんですか?

もちろん。お坊さんの専門学校みたいなのがあるんですが男女共学で、跡継ぎのいないお寺からお婿となるお坊さんを探しにこられる女性もいるくらいです。

確かに、娘さんしかいないお寺って…跡継ぎ問題がありますよね…

出会いの場でもあったりしますねえ。次男がモテたり。(笑)

結局はなんでもありな感じがしてきたんですが…

いや、う〜ん……私たちは檀家さんからお布施をいただいて生活できているので、まずは檀家さんの、もっと言えば社会の人たちのご理解の範囲内なら、なんでもやっていいというのが真実だと思いますね。
結論
「檀家さんの理解があればなんでもあり」(若林さん談)
僧侶はさらにフリースタイルに変わるはず
若林さん曰く
「仏教のテーマは『苦』です。世の中に、苦しみや悩みを抱えていない人はいない、と説かれていて。苦しみや悩みの原因は何か、いかにすれば軽くなるか、なくなるかを教えてくれるんですよね。たとえば映画や音楽など…いいものを見たときに誰かに教えたくなる、それと同じような気持ちでずっと、仏教を生きる良さを発信している。」
とのこと。
そして、仏教でいう「お布施」には「財施」「法施」「無畏施」という3種類があって、お金としての「財施」をいただいて生活させていただいている者として、仏法を説く「法施」と安心を与える「無畏施」が僧侶の勤めとおっしゃっていました。
その勤めを果たす一つの方法として、フリーペーパーでの発信につながっているんですね!!
そんなやりがいの源が、仏教の信念につながっていることが、フリースタイルと言えど僧侶なんだなあと思ってしまいました。
web業界の方だと、とにかく「バズる」方へ意識がいきがちですが、こんなまっすぐな気持ちで続いているフリーペーパーだったんですね。
僧侶は檀家さんの了承があれば何をしてもオーケー!?
時代の変化によって僧侶もどんどん現代の僧侶に変化しているし、
これからの僧侶はもっとフリースタイルに変わっていくはず〜!
インタビューの最後では、「僧侶っぽい方がいいかと思って」と袈裟を用意して着替えてくれた若林さん。
僧侶らしい優しさを感じる〜!
たくさんのありがた〜いおはなし、ありがとうございました!
フリーペーパーについて

フリースタイルな僧侶たち
配布地域:関西を中心としたお寺・飲食店など。
詳しくはこちら(http://www.freemonk.net/freemagazine#map)
発行間隔:偶数月の1日付け
WEBサイト:http://www.freemonk.net/
こんなにアツイ想いのつまった、現代を生きる僧侶のフリーペーパー「フリースタイルな僧侶たち」は関西を中心としたお寺、大学、本屋さんなど、様々なスペースで手に取ることができますよ〜!
もちろん京都のフリーペーパーのお店・只本屋でも配布しています!
ネットでも読むことができちゃうのでまずはこちらのページから読んでみて下さい。